今夏も多くの移籍が成立した。
マンチェスターユナイテッドは200億円以上を投じて、多くの選手を獲得した。
アルゼンチン代表MFアンヘル・ディ・マリアをレアルマドリードから獲得、またASモナコに所属するコロンビア代表FWラダメル・ファルカオを買取オプション付きのローン移籍で獲得した。
その他にも、オランダ代表MFダレイ・ブリントやイングランド代表ルーク・ショー、アスレティック・ビルバオからMFアンデル・エレーラを獲得した。
その他のクラブも、チェルシーはアトレティコ・マドリードからスペイン代表FWジエゴ・コスタを獲得し、またバルセロナからスペイン代表MFセスク・ファブレガスを獲得した。マンチェスター・シティはファイナンシャル・フェアプレーの影響もあり、これまでの移籍市場の時のような動きは見られなかった。
アーセナルは、バルセロナからFWアレクシス・サンチェスを獲得し、マンチェスターユナイテッドからはイングランド代表FWダニー・ウェルベックを、サウサンプトンからイングランド代表DFカルム・チャンバースを獲得するなど積極的な補強を行った。
このように、年に2回訪れる移籍市場では数多くの取引が世界中で行われているのである。
これは2012シーズンにおける国別の移籍金使用額である。イングランドが最も多く約€3000mとなっている。
欧州全体で€10.9billionの移籍金が支払われており、その中でもイングランド、イタリア、スペインのクラブだけで欧州の約62%もの移籍金を支払っている。
プレミアリーグに所属するクラブのほとんどが100億円を超える収益をあげている現在、世界中からスーパースターを獲得しているイングランドが最も移籍金を使用しているのに対し、近年成長著しいブンデスリーガは3位のスペインの約半分程度の移籍金しか使用していないのだ。
ドイツには質の高い育成機関を持つクラブが多く存在しており、国外から優秀な選手をかき集める必要がなくなってきているのも事実といえるだろう。
これは2010-2014年の5年間における移籍金支払額の割合である。
プレミアリーグ、セリエA、リーガエスパニューラの3つのリーグで世界の約半分の移籍金を支払っていることがわかる。
また、イングランド2部が世界の2%を占めており、イングランド2部に所属するクラブも昇格するために世界中から優秀な選手をかき集めようとしていることがわかるだろう。
しかし、イングランド2部のクラブのほとんどが赤字経営を行っている事実もあるため、クラブが破産することも少なくない。
これは、2010-2014の5年間における移籍金収入額の割合である。
選手を売却し、最も多くの移籍金を手にしているリーグはセリエAである。次いでプレミアリーグ、リーガエスパニューラとなっている。
移籍金支払額はセリエA、プレミアリーグ、リーガエスパニューラで約半分を支払っていたが、移籍金収入額は約38%に留まっている。
それとは対照的に、支払額はランクインしていなかったサッカー大国ブラジルが移籍金収入額ランキングで第6位にランクインしているのである。
近年のブラジルクラブは、欧州ビッグクラブに高額の移籍金で選手を売却することに成功しており、移籍金収入額が上昇したと考えられる。
これは、年に2度ある移籍期間中に欧州クラブが支払った移籍金額の推移である。
主に、夏の移籍期間中に多くの移籍金が使用されており、冬における移籍金使用額は€500m前後となっている。
夏にシーズンが開幕するリーグが多いことも影響しているだろう。
従ってシーズン終了が5月や6月に集中している欧州リーグ・クラブに所属する選手の契約は6月末日までのケースが多い。
欧州ではここ5年間の間に€15mを超える移籍金となった移籍件数は166件となっている。
その中で最も多く€15m以上の移籍金を支払って獲得した選手が多いのがイングランドとなっており、63件となっている。
近年のイングランド代表が、世界で活躍することが出来なくなっているのもこの影響がある考えられる。世界中から多くのスーパースターを獲得することでリーグ、クラブの価値やは上昇したものの、イングランド人選手の活躍の場としては、相応しいリーグとは言えなくなっているのも事実である。プレミアリーグのビッグクラブの多くは様々な国籍の選手が所属しており、イングランド人選手の割合が低くなっている。
これは€15m以上の選手を売却した件数である。
最も多く€15m以上の選手を獲得していたイングランドは、売却数も1位となっており38件を記録した。
また、ブラジルやウクライナのクラブから高額な移籍金で売却されているケースが見られた。ウクライナにはシャフタール・ドネツクという欧州でも活躍しているクラブが所属しており、多くのブラジル人選手も所属しているクラブとなっているのが影響していると考えられる。
次に€15m以上の移籍金が発生した取引対象となった選手の国籍の割合を表したものである。最も多くなっているのがブラジル人選手の24件となっており、その割合は16%となっている。それに次いでスペイン人選手、アルゼンチン人選手となっている。
近年、多くの若手選手が欧州の舞台で活躍するようになったベルギー代表選手が高額な移籍金で取引されることが増えたためドイツ人の次に多く取引されていると考えられる。
次に、これは移籍金支払額と契約年数の関係を表したものである。
※調査対象は約600件の移籍金の支払われた取引と、200件のフリートランスファー、もしくは契約満了選手を対象とした
移籍金支払額が€10mを超えた移籍の場合、平均の契約年数は約4.38年となっており、€5-10mの取引は4.23年となっていた。
それとは対照的にフリートランスファーで獲得した選手、もしくは契約満了選手との契約期間は約2年と短くなっていた。
フリートランスファー、もしくは契約満了となった選手の契約期間は移籍金を支払って獲得した選手よりも短くなっており、一時的に必要となった選手や、バックアップの選手として獲得されることが多くなっていると予想される。また、フリートランスファーとなる選手の多くは30歳以上の選手であることが多いのも事実である。
€1m以上の移籍金が支払われた取引対象となった選手の契約期間については、約39%が5年契約を結び、4年契約もしくは4年半契約を結んだ選手が37%となっていた。
欧州では、移籍金は選手自身の売買ではなく、「選手登録権」の売買と考えられている。
そのため、選手登録権の会計処理方法は、選手登録権の獲得の際に支出した金額(移籍金)を取得原価で無形固定資産として計上し、選手との契約期間に渡って、定額法で償却されるのである。
ファイナンシャル・フェアプレーが導入された現在、今後の欧州サッカーがどのように更に発展していくのか注目していこう。