2014年6月29日日曜日

FIFAワールドカップ〜アトレティコ旋風〜

現代サッカーにおいて、大きな勘違いが存在している。
それは「ボール支配率が高いチームが強い、もしくは勝てる」と言った考えだ。
これまでのサッカー界においてFCバルセロナが魅せたサッカーは美しかった。世界中のクラブがバルセロナのようなサッカーに憧れ、目指した。
しかし、今シーズン、そのサッカーを打ち破る戦術が”エスタディオ・ビセンテ・カルデロン”で輝いた。


そのチームは、現役時代「ファウルも厭わない激しい”削り”でマーカーを震え上がらせるだけでなく、時に対戦相手のキーマンに挑発行為を繰り返して退場に追い込むことも涼しい顔でやってのけた」ディエゴ・シメオネ監督が率いるアトレティコ・マドリードだ。



「ファウル数が増え、ポゼッションは低くなったかもしれない。しかし結果として試合に勝てば、ファンは”戦うチーム”という印象を持ってくれる。今までのチームには何かが欠けていた。それが戦う姿勢とインテンシティだった。」(ディエゴ・シメオネ)


例えばコロンビア代表で現モナコFWのファルカオは、アトレティコ・マドリード在籍時、それまでゼロだった警告を4試合連続で受けるほどチェックの激しさが増し、ヴォルフスブルクで問題児とされたジエゴもトップ下で自由に動くのは攻撃時のみで、守備時は速やかに右サイドに戻ってプレスに参加するようになっていた。


こうした意識の変化により、それまで16試合で計261回(1試合平均16.3回)だったファウル数はシメオネ就任後の6試合で128回(1試合平均21.3回)に増加。1試合平均3.25枚だった被警告数も平均4枚に増えた。一方で、対戦相手の枠内シュート数は1試合平均2本に抑えることに成功したのであった。


ブラジル大会で結果を残しているチームの幾つかには「ある共通点」がある。
それは「ボール支配率」である。

現代サッカーにおいて、最もお手本とされてきたバルセロナの"Tiki Taka"があった。

バルセロナは、圧倒的なボール支配率と華麗なパスワークで数多くの栄光を手にしてきた。元バルセロナの監督であり、現バイエルン・ミュンヘンの監督であるペップ・グアルディオラはバルセロナで魅せたサッカーを国を、チームを変えて再び披露してみせたのだった。リーグを圧倒的な力で優勝し、連覇は達成できなかったがCLも順当に勝ち上がった。

今年度のバルセロナの成績にも現れているように、"TikiTaka"対策をほぼ完璧に成し遂げたアトレティコ・マドリードが、リーグ優勝を成し遂げ、またCLでも準優勝を果たすなど、"TikiTaka破り"を披露してみせたのであった。

「我々が臨むのは、アグレッシブで激しく、勇敢に戦い、スピーディーなカウンターを武器とするチーム」(ディエゴ・シメオネ)



今大会の傾向として、ボール支配率が低いチームが勝ち進んだ。例えば「コロンビア」。
中盤には、MFハメス・ロドリゲス(モナコ)、MFクアルダード(フィオレンティーナ)を揃え、また最前線にはFWグティエレス(リーベル・プレート)やジャクソン・マルティネス(ポルト)など豪華なメンバーが控えている。



これだけのメンバーを揃えていれば、ボールを支配して"TikiTaka"を目指すことはできた。
しかし、名将ペケルマンが選択したのが、アトレティコ・マドリードのような「高速カウンター」サッカーであった。


日本代表戦でみせたMFハメス・ロドリゲスの高速カウンターが良い例だ。
相手にボールを支配させ、ラインが高くなったDFラインの裏を積極的に狙うサッカーだ。
日本代表を応援していたサポーターは「この試合いけるぞ」「ボールを支配できている」と見ていたかもしれない。しかし、これは「ボールを持たされている」という表現が正しいだろう。

戦術として引くことが「ださい」「つまらない」という考えをする人もいるが、サッカーにおいて最も重要な事は「勝利」である。
勝利をするための手段として、「神の手」「意図的に手でのシュートストップ」「退場させる(頭突き)」など多くのプレーヤーが様々な手段を使ってきた。
「勝利」を手に入れるために。



スペイン代表のようなサッカーを目指した日本代表は、ボールを支配するという「手段」だけに注力し、サッカーにおいてもっとも重要なことを忘れていた。

日本のサッカー文化と世界のトップレベルのサッカー文化との間にも、大きな差を発見することが出来た"価値のある敗退"であった。



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